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拙作 デックローグ のデザイナーズノートです。

想定読者は、デックローグを気に入ってくれた方や、アナログゲーム製作者です。

Slay the spire を遊んだことがないと、記事の内容が半分くらいピンとこない気がします。ご容赦ください。

記事が面白かったら、クラウドファンディングのキック検討や、情報の拡散をよろしくお願いします(ダイマ)。

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デックローグとは?

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工藤が2024春にリリースした 一人用のデッキ構築ローグライクゲーム です。

敵を倒してデッキを強くしながら、最奥にいるボス討伐を目指すゲームです。

詳細ルールはこちらをご覧ください。

動画も作っていただきました。ありがとうございます。

なんで作ったの?

Slay the spire をいっぱい遊んだので、まず 何かアウトプットしたいな がありました。

考えたところ 敵がカードだけで表現できそう だったので、アナログゲーム化してみたのが始まりです。

すべてカードで表現できるなら、内容物は少なくできるし原価負けもしなそうですからね。


 

作り始めて「だいたいできた」と思ったら、タイムラインにボードゲーム版slay the spire の話題が流れてきてシステム被ってないか一人でドキドキしてました。

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敵の表現

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Slay the spire の敵の重要要素は以下と分析しました。

  • 敵の次の行動が見えている
  • 定型行動
  • ルールの押し付け

分析した結果「カード1枚を公開して置くだけで実現できそう」と判断したことがデックローグ制作の発端になっています。

それぞれ説明します。

敵の次の行動が見えている

敵の次の行動が見えていると「防御しよう」「スキができたから大技を撃とう」の判断ができます。

すると、カードを使う順番を考える必要性がでるため、戦術性のある戦闘になります。

行動を書いて公開しておけばカード1枚で表現できますね。

戦術性のある戦闘については、以下記事が面白かったので興味があったら一読をオススメします。
どうすれば、ターン制バトルで『戦術性』を作ることができるのか?

定型行動

Slay the spire の敵の行動は大枠としては2〜3種類の行動で成り立ちます。

特に意識した敵は隠しボスの「堕落の心臓」です。
最初に戦ったときは「いろいろな行動をする」ボスの印象でしたが、実は以下3行動をループしていることに気づきました。

  1. バフ or デバフ
  2. 重い一撃 or 超多段攻撃
  3. 2でやらなかった攻撃

「いろいろな行動をする」と感じたボスは、実はシンプルな行動パターンだったのですよね。

3行動を書いてループさせるだけなら、カード1枚に入ります。

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Slay the spire には確率分岐で行動を変える敵も多くいますが、完全固定だけでも表現できそうだったため、デックローグでは完全固定制を採用しています。内容物も少なくて済みますし。

ルールの押し付け

slay the spire の敵は、対応策のあるルールを押し付けて来ます。

例えば以下。

  • 毎ターン火力が上がり続ける(だから、早く倒せ)
  • 3回殴られるまで受けるダメージ半減(だから、多段攻撃しろ)
  • 2ターンに1回しかダメージを受けない(だから、攻撃と防御を使い分けろ)

敵ごとに「特殊能力」を付与し、カードに1〜2行書き足せば表現できそうです。
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「敵の行動が見えている」「定型行動」「ルールの押し付け」すべて記載してもカード1枚で表現できそうです。

敵がカード1枚で表せるなら、ほぼカードだけで Slay the spire ぽいゲーム実現できそうだな となったため、デックローグの制作は始まったわけですね。

DeckRogue_14

Slay the spire と異なるオリジナル要素

たくさんあるのですが、特に大きいと思われる要素を3点解説します。

全体的にアナログ化するため「処理をシンプルにしたい」「内容物を少なくしたい」を念頭に置いています。

リシャッフルしない

デックローグでは、山札を使い切ったあとに捨札をリシャッフルせず 捨札をそのまま裏返して山札 にします。

最初はリシャッフルしていたのですが、テストプレイして リシャッフル頻度が多いとめんどくさい と感じました。

デザイナーインタビュー:イーオンズエンド(翻訳記事)

上記の記事を読んでリシャッフルしないと以下効能があることは把握していました。

  • 毎回のリシャッフルめんどくさいが解決する
  • 不確実性を減らせてコンボを仕込みやすくなる

試しに「リシャッフルしない」を試してみたところ、いい感じだったため「リシャッフルしない」を採用しています。

エナジーがない

デックローグは Slay the spire と異なり、エナジーの概念がありません。

「エナジーを消費して、カードを使う」を毎カードごとにやるのが めんどくさそう と考えたためです。

デジタルなら自動で処理してくれますが、アナログだとカードを使うたびに毎回手動でリソース操作の作業が必要になるので プレイ感が悪くなる気がした のですよね。

拙作 DECK THE TACTICS (リメイク : デクタクR)を作った際に同じようなことは考えており 手札=エナジー にしても機能することはわかっていたので、エナジーの概念をなくして手札は(基本的に)コストなしで使える構造にしています。

プレイ感は軽くなるし、パラメータ管理も不要になるし英断だったと思います。

強いカードは「手札を追加で捨てる」「HPを失う」「使用条件をつける」などのデメリットを持たせることで実装しています。

ブロック値ではなくダメージ軽減

敵の攻撃に対する防御手段は、ブロック値にするかダメージ軽減にするか迷いました。

ブロック値のメリット

  • デッキ内のカード種別を「アタック」と「スキル」だけにできる
  • プレイヤーがカードを使うタイミングを統一できる
  • より Slay the spire 感が出る
ダメージ軽減のメリット

  • 「ブロック値」パラメータを管理する必要がない
  • (パラメータ管理と異なり)上限なしにできる
  • カードを使うタイミングがずれることで、より「使う順番」を意識させられる

それぞれのメリットとデメリットを考え 管理パラメータを増やしたくない が大きかったのでダメージ軽減を選びました。

前述の エナジーがない により、手札を何も考えずに使い切り易い構造にもなっているため、結果的に「使う順番」を意識させられる「ダメージ軽減」案の方がゲームと噛み合ったと思います。

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まとめ

デックローグのデザイナーズノート でした。

他にもいろいろ工夫した点はあるのですが、キリがなさそうなのでこの辺で。

Slay the spire のアナログ化を少ない内容物で目指したゲームは Slay the spire 感のある別ゲーム になりました。

内容物をできるだけ少なめにしたことで「新幹線の座席テーブル」や「自動車の助手席」など、いろいろな場所で遊んでもらえたことが印象的です。

 

デックローグはしばらく絶版だったのですが、この度2人プレイ対応版が出ることになりました。ありがとうございます。

記事が面白かった方は、クラウドファンディングのキック検討や、情報の拡散をよろしくお願いします(ダイマ・2回目)。